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美少女のポスターの貼られた店の前で腕を組み、端麗な顔に深刻な表情を浮かべた青年が一人。
「ねぇ、ちょっとあの人格好良くない?」
「ホントだー!でも、何であんなトコ居るんだろ?似合わないよねー」
「だよね?」
通りすがりの女性達の揃えて口にするそんな言葉は聞き流し、その男は必死に耐えていた。
「………」
…死にそうだ。羞恥心とかそんなのはどうでも良い。問題はこの場所の空気だ。
体全体で拒否反応が出てる。一歩踏み出せば、ダッシュで帰宅する。
何が妹萌だ現実を見ろ。妹はあんなんだ。
「ふぃー、買った買ったぁああ!!これで存分に萌えを堪能出来─あぶぁっ!!」
「しなくていいわ」
ちょうど大量の荷物を持ち店から出てきた妹─神楽の頭を叩く。
「何という仕打ち!?神楽泣いちゃうよ?」
「泣きたいのはこっちだ。店前で珍獣扱いの放置プレイされてた俺の身になれ。制服着て身元の割れる危険の増した俺の身に」
学校に少々、用事があるのでそのまま行こうとしたのだが。
神楽、そういえばお前補習だっただろ。それ持って行ったら即没収されるからな?
「神倶夜様、申し訳ございませんでしたぁああ!!あと一件!あと一件だけだから!!本命のフィギュア屋に俺の嫁貰いに」
「まだあるか!と言うより本命の嫁優先しろ!!」
何の為に我慢してたんだ?俺。
「誠に恐縮です。さて行こうか!俺の嫁探しに」
「………」
─バシッ!!
「あべしっ!!何で今、叩いたの!お兄さまァ」
「…ふっ。お前の頭でも分かるとおもったんだがな?神楽」
「あわわっ…黒夜さま、降臨なすっちまったよ─…ガクガクブルブル」
鼻でせせら笑う神倶夜を前にしていても震えるしかなかった。黒い神倶夜、略して─黒夜さまが降臨なさったから。
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