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その時。
「…駄目だよ」
耳元で声がして、稜は驚いて手を引いた。
…み、見つかった?
「痴漢なんて、いけないなあ…少年」
背後でボソボソと話しかけてくる声。
低い男の声だった。その声には楽しんでるような雰囲気を孕んでいる。
「……や、やってません」
男にだけ聞こえるような小さな声で稜は返事をした。
…やっぱりばれてたんだ。
稜は震え出す身体を必死に押さえた。
しかしそれさえも見抜いているようだ。男がクスクスと笑っているのがわかる。
「怖いならしなきゃ良いのに」
稜は動揺して後ろを見ることが出来ないが、声の主はどうやら年上。低くて、穏やかで…聞いているだけでドキドキするのは、本当に痴漢がばれてしまった恐怖からだけなのだろうか。
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