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「パプ~じゃないよ、ロクちゃんが―――」
「ワケの分からない事言わないで頂戴!これ以上私を困らせたいの!?私をこれ以上苦しめるのが、そんなに楽しいの!?アンタさえいなけりゃ良かったのに!!!」
「・・・・ごめんなさい・・生まれてきてごめんなさい・・・」
ベッドの上のガンを抱き寄せ、堪える腕を交差して抱きしめる。少し苦しそうな表情のガンだが、その耐え得る心が痛いだけに鳴きはしなかった。
だが、上から落ちてくる涙だけは、無数に降り注ぐ雨のように止まりはしない。
悲しみという熱を持ち、罪悪感という背徳を懺悔し、世の中でただ一人喜んでくれる筈の母親が自分の存在を全否定しているのだ。
6歳の少女には重すぎる。
―――多分、いつもこんな感じなのだろう。
「やれやれ、これは想像以上ですねぇ」
母親には姿が見えていないらしいロク介は、一人傍観気味な重い溜息を一つはく。少し暑いのか帽子を団扇代わりに風を作ったり、ともかく第三者的にも痛い光景のようだ。
「なぁ、ロク介」
母親からの痛すぎる視線を受け、まだ俯き泣いている少女の腕の中からガンは話しかけてくる。なんだろうと首を傾げれば。
「お前のクスリ売りは、ただの気休めじゃないのか?実際問題、何かが解決するワケじゃねぇ。荒んだ社会を改善しようという趣旨は立派だが、おめぇのそれは些細も役に立たねぇ。そういうの、偽善者っつーんだ。馬鹿っつーんだ」
「知っています」
「だったらなんで、そんな無駄な事を」
「でも、無駄なんかじゃない。事実、ありささんはお腹を抱えて笑ってくれました。滅多に笑わないと伺ったのでどんな堅物かと思いましたが、何て事はない普通の女の子です」
母親の怒号はまだ続いている。
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