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あのオーバーアクションな自己紹介を思い出せば慈善事業かと思ったが、そうでもない。
度々にシビアな発言が届いたのも、それがロク介にとって何よりも意味を見出すものだからだろう。
焦らずゆっくりと、けれども目的は決して薄れず誇示し続けたままで。
「ですからありささん、貴女が耐えるのも決して無駄ではありません。耐えているのは自分の為、そしてそれは貴女を仲介として両親の為でもある。いつの日か、きっと分かって下さる日が来るはずです。人の間に人として生まれたのです、貴女は幸せになる権利があるのですから」
「ロクちゃん・・」
「ありきたりな事しか言えなくて申し訳ありません。笑わす事には自信があるんですが、どうにもしんみりした雰囲気は苦手と申しますか・・」
らしくない自分を自覚しているのだろう。視線もどこか泳ぎ、照れ臭そうに頭を掻いてすらいる。そして自分の身の上話も持ち出したのだ、今更だが恥ずかしくなってきたらしい。
それを見てからかうのはガンである。
「へぇ。お前も結構ウブなとこあんだな」
「僕はウブの固まりですよ。いつまでも少年の心を忘れない行商人です」
「結局は商売かよ!」
「当然じゃないですか。―――さて」
ひと段落ついた、とばかりにロク介が開けてみせたのは、大事に背負っていた風呂敷の中身だ。何てことはない、少し分厚いただの箱である。
だが、その箱の中には細々と色んな物が詰め込まれていた。
「わぁ、この手鏡かわいいっ!」
「何だ?ガラクタか?」
手鏡から化粧グッズ、ペンダントにロザリオ、衣服に書籍―――まとまりのないそれらがただ詰め込まれているだけの中身を拝見し、ガンは思ったままの事を口にする。
「これらは全て、幸ですよ」
「??」
「物には心が宿ると云います。それは愛着があればあるほど魂で満たされ、大事にしていればしている分、その物には幸が宿っているのです。勿論、真逆を申せば憎しみを込めた物には邪悪な物しか呼ばないワケですが」
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