紫の黄昏

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私は20歳の時に結婚した。 相手は一つ上の会社の先輩 彼は子供が欲しいと言った。 けれど…私は子供が産めない体だった。 最初は知らなかった。 なかなか妊娠しない私を心配した彼と共に産婦人科で検査を受けた時にわかった。 ―奥さん…貴方は子供が作れない体です。― 医者が言いにくそうに告げた真実 私はその言葉を受け入れられなかった。 医者が話を続ける ―昔に大きな病気をされたせいで…排卵はしても卵子はない体になってしまったのですよ…― 医者の言葉は呆然とする私の前を過ぎて行くだけだった。 彼も似たようなものだろう それから彼が浮気して、浮気相手を妊娠させたのは半年後の事だった。 それは私の精神のバランスを崩すのには十分過ぎた。 そして家庭が崩壊するのも… 彼が差し出した離婚届けに私はサインするしかなかった。 子供が欲しかったのに、産めない私はただの役立たず同然だからだ。 今も忘れない 彼の隣りで勝ち誇った表情でお腹をさする愛人の姿を…
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