翡翠と綾葉

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翡翠と綾葉

「失礼します!」 声は、ソプラノだろうか。礼をして入ってきたのは、セーラー服を来た女の子だった。たしか、この地区のサッカーがすごく強い学校の制服だ。…それ以外、その学校については知らない。 「よう来たね綾葉、そこに座り」 先生の言葉に元気よく返事をして、その子は私の前の席に座る。 向かい合う形になったので、まじまじとその子を見てしまった。 髪は肩につかないくらいで、緩くパーマのかかった明るいブラウン。目はアーモンド型で、大きくはないけどきらきらとよく動く。メイクは濃くはないけど、マスカラが目立つかも。…私服ならzipperとか好きそうだな。 何より、明るくて生き生きとした表情だった。 きっとこんな子、クラスでも明るいグループに入って、人気あるんだろうな…私なんか、話が合うんだろうか… そんな風に思っていたら、不意にその子と目が合う。 ど、どうしよう、挨拶したほうがいいの!? 焦る私に気付いてるのかいないのか、その子はちょっと不思議そうな顔をした後、私に笑いかけた。 見とれるくらい、明るい笑顔だった。 うっかりぼうっとしてたら、先生が声を掛けてくれた。 「翡翠ちゃん、こいつは藤居綾葉。高1やから君と同い年やな。一か月前からうちに習いにきてるねん」 「あやは…さんですか」 「同いでしょ?綾葉って呼び捨てで呼ぼうよー。敬語もちょっと緊張する」 「あっ、すみませ…ごめん」 「そうそう、ナイス切り換え」 『綾葉』は、コロコロと良く笑う。 「初対面からあんまバシバシいかんときや綾葉。この子今日入ってきたんやから。えと、坂江翡翠ちゃん」 「ヒスイ?宝石の?きれいな名前!ね、翡翠って呼んでいい?」 「う、ん」
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