219人が本棚に入れています
本棚に追加
翡翠と綾葉
「失礼します!」
声は、ソプラノだろうか。礼をして入ってきたのは、セーラー服を来た女の子だった。たしか、この地区のサッカーがすごく強い学校の制服だ。…それ以外、その学校については知らない。
「よう来たね綾葉、そこに座り」
先生の言葉に元気よく返事をして、その子は私の前の席に座る。
向かい合う形になったので、まじまじとその子を見てしまった。
髪は肩につかないくらいで、緩くパーマのかかった明るいブラウン。目はアーモンド型で、大きくはないけどきらきらとよく動く。メイクは濃くはないけど、マスカラが目立つかも。…私服ならzipperとか好きそうだな。
何より、明るくて生き生きとした表情だった。
きっとこんな子、クラスでも明るいグループに入って、人気あるんだろうな…私なんか、話が合うんだろうか…
そんな風に思っていたら、不意にその子と目が合う。
ど、どうしよう、挨拶したほうがいいの!?
焦る私に気付いてるのかいないのか、その子はちょっと不思議そうな顔をした後、私に笑いかけた。
見とれるくらい、明るい笑顔だった。
うっかりぼうっとしてたら、先生が声を掛けてくれた。
「翡翠ちゃん、こいつは藤居綾葉。高1やから君と同い年やな。一か月前からうちに習いにきてるねん」
「あやは…さんですか」
「同いでしょ?綾葉って呼び捨てで呼ぼうよー。敬語もちょっと緊張する」
「あっ、すみませ…ごめん」
「そうそう、ナイス切り換え」
『綾葉』は、コロコロと良く笑う。
「初対面からあんまバシバシいかんときや綾葉。この子今日入ってきたんやから。えと、坂江翡翠ちゃん」
「ヒスイ?宝石の?きれいな名前!ね、翡翠って呼んでいい?」
「う、ん」
最初のコメントを投稿しよう!