翡翠と綾葉

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「綾葉!!」 叫んでから、こんなに大声を出したのは、歌うとき以外では久しぶりだと気付いた。 …どうしよう。呼びかけたはいいけど、なんて言ったらいいのかわからない。 「なに?」 綾葉はにこやかな笑顔のまま振り返る。何か、言わなきゃ、何か… 「アドレス、教えて。メールとか、したい」 やっとのことで言ったのは、そんな間抜けな一言だった。 綾葉はそうだね、と返事をして、私のほうに歩いてくる。 「…ともだちに、なりたいの」 伝えたいことを言ったら、びっくりするくらい幼稚な言葉になった。 もう少し言葉選ぼうよ私、と一人で焦っていたら、 綾葉は笑って、「私も」と言った。 世界が明るくなったような気持ちだった。 慣れない赤外線で受信した綾葉のアドレスは短かったけれど、小さなつながりをもらったみたいに感じる。 「また、レッスンまでにメールするよ」 綾葉は笑って、改札の向こうに消えていく。 それが、高一の春。綾葉と私の三年間は、そうやって始まった。
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