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周りでは黒い服を来た大人たちが泣いている。
そう、江角啓吾が車に跳ねられ死んだのだ。
私は泣くこともせず、ただぼーっと突っ立ってるだけだった。
一度に色んなことがありすぎて、私の頭の中が整理出来てないせいもあるだろう。
親戚や両親…友達や先生。
皆皆泣いている。
写真の中のアイツはいつも通りの笑顔を見せて、皆に笑っている。
「ねぇねぇ、お母さん」
頭がぼーっとしながら、声のする方へ向くと、小さな可愛らしい女の子が泣いているお母さんに首を傾げていた。
「どうして泣くの?お兄ちゃんは凄いね…!ほら、お兄ちゃん大きい!!…でも、皆何で泣いてるの?」
5歳くらいの女の子だ。
何が起きてるか分からないのだろう。
女の子の目には、自分の兄が大きな写真で飾られていて、大勢の人が集まっている。
自分の兄がもう二度と帰ってこないことを理解出来ず、ただ自分の兄は何か凄いことをやったんだと思い込んでいる。
母親はその小さな不思議そうな顔をしている娘を、力強く抱き締めた。
その瞬間、私は何か頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
今すぐ土下座して、謝りたい気持ちにかられたのだ。
誘ったのは江角。
だけど、私に出会わなかったら…あいつは死ぬことなんて無かったんだ。焼香をあげたり、拝んだりした。
今は、皆花を一輪ずつ持ち、江角の棺の中にそっと置いて、泣き崩れる人や別れの挨拶をする人、今までの思い出を泣きながら話す人それぞれだった。
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