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ついに私の番となった。
色白くて、安らかな寝顔だった。
死んでるなんて嘘みたいで、本当にただ眠ってるだけに見える。
名前を呼んだら、笑って起き上がりそうで、全部一度に起こったことが嘘みたいだった。
私はそっと一輪花を置いた。
そして、手を握った。
やはり、冷たくて…私といた時のあの体温では無かった。
私は語ってあげられる思い出もない、ただ今になってやっと涙が溢れてきたのだ。
今になってようやく、江角啓吾の死を認めることが出来たのだ。
私は声を出さず、ただ手を握りながら目を固く閉じ、心の中で一言こう言った。
―こんな私を好きになってくれて、ありがとう―
…と。
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