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  職務を終えた私は、今日の仕事ぶりを書類にまとめながら悦に入っていた。 安永優斗君、七歳。 お隣の家の三原彩ちゃんに絶賛片思い中だった。 過去形のくくりになっている理由は、私がたった今彼らを両想いにさせてきたからである。 今頃一緒に楽しく遊んでいることだろう。 背もたれに体重を預けながら、想像したら頬が緩んだ。 「先輩またニヤニヤしてる」 急に声をかけられて、肩を震わせた。 驚いて後ろを振り返ると、楽しそうに笑うエリーちゃんが見下ろしていた。 「また仕事相手のこと考えてたんですか? 先輩好きですねえ、この仕事」 彼女はくすくすと笑いながら言う。 綺麗な金色に染まったふわふわの髪の毛が、彼女の肩の上で優しく揺れた。 相変わらず可愛らしい。 真っ青な瞳はくりくりしているし、肌も透き通るように白い。 薄い桃色の唇が穏やかに下弦を描いていて、同性の私まで柔らかな気持ちにさせてくれた。 エリーちゃんの着ている白服は私と同じだけれど、なんだかそれまで輝いているように見えてくる。 彼女ほどに美しければ、もはや女としての嫉妬など抱く余裕もない。 天使、というこの職業のイメージをそのまま形にしたような女の子なのである。 完敗すぎて、妬むのも虚しかった。 「エリーちゃん……いつから見てたの」  
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