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知らない内に見られていたことを思うと恥ずかしい。
羞恥に染まる顔を自覚しながら尋ねる。
「さっき、先輩に紅茶作ったんです。で、持ってきたら先輩がにやにやしてたんで、ずっと見てました」
悪気のない顔でエリーちゃんは笑う。
頭上の光る輪が、頷くように揺れて見せた。
「ほら」とまっしろいカップを渡されたので、私は「ありがと」と答えてそれを受け取った。
彼女の紅茶は美味しくて、好きだ。
「で、今日の仕事相手はどんな子だったんですか?」
「すっごく可愛い子よ」
思い出すとまた顔がゆるゆるになってしまう。
抑えようとするのだが、どうしても無理だった。
あの少年のことを思い出すと心が温かくなる。
お腹の奥から歓喜がせりあがってきて、ここが職場じゃなければ万歳三唱でもしているところだ。
「男の子でしたっけ?」
「そうそう。隣の家の子に恋しててね」
「可愛いですねえ」
「でしょう?」
ああ、幸せ。
やはりこの仕事は私に向いている。
非常に満足だ。
カップに口づけて、甘ったるい紅茶を堪能した。
どろどろに溶けた砂糖は、疲労した私の体を巡っていく。
気持ちいい。
体がほぐれていくような気がする。
「おい、ネコ」
その時、不愉快な呼び名が私の鼓膜を揺らした。
反射的に眉をひそめてしまう。
声のした方に、瞳だけをぎょろりと向けた。
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