「缶詰男」

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僕の股間には傷がある 陰茎を囲むように丸い傷がある プ-ルや銭湯や温泉や性行為などで僕のチンチンを目にしたことある人はあの丸い形の傷が気になったはずだ。 だから今日はあの傷の出来た理由(わけ)を話します。 あれは僕が17歳くらいの頃。 近所のアパートに「佐田さん」という男性が住んでいた。 佐田さんは、うちの近くの美大に通う大学生だった。 浪人をしていたのか、なんだかはわからないが年はすでに30歳だった。 顔はわりと若い感じだったが、髪は相当薄くなっていて 僕の好きな「オジ-オズボ-ン」って言うミュージシャンによく似た顔をしていたんだ。 僕が佐田さんと出会ったのは真夜中の公園。 なんだか気持ちがモヤモヤしていて寝れない夜僕が一人CDウォークマンを聞きながら近所の公園を散歩している時に出会った。 「へー クイ-ンなんて聴いてるんだ~」 突然 気味の悪い禿げた男が暗闇から話しかけてきた。 「え?」 僕はウォークマンの音量が大きすぎて音漏れしていたのかと思って 慌ててイヤホンを外してみたがまったく音漏れなどはしてなかった 「え?音漏れしてました?」 一応 僕はその男にそう尋ねた。 「いや。音もれは全然してないよ。でも俺も好きなんだよね」 禿げたその不思議な男は意味不明にそう答えた。 僕はその男がなぜウォークマンの中身を知っていたのかはさほど気にならなかった たしかに気味は悪かったがその男と深夜の公園のベンチで僕は一時間ほど「クイ-ン」の話をした。 「昔のポップスとかロックとか好きだったわけじゃないんですよ。 むしろ物足りないですけどねー。 ただ、子供の頃兄貴がギタ-練習でやっていたクイ-ンの曲のなんか甘酸っぱいメロディーラインが胸キュンなんですよー」 僕は気がつけば その男とそんな話で盛り上がっていた。 これが佐田さんとの出会いだ。 意気投合した僕らはコンビニでカップ焼きそばとコーラとお菓子を買って 佐田さんが住んでるアパートに向かった。 佐田さんの部屋は美大生らしく 芸術的な絵の作品がたくさん部屋に飾られていた。 ヤキベンを食べたり 佐田さんの描いた作品集を見せてもらったり CDを聴いたりして僕らは過ごした。
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