始まりの幕開け

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――よく、蔑まれたものだ……。 自分は王族である為に、目立たないから良かったものの、絶対に陰口を叩かれていたに違いない。 歌わない、笑わない王女と。 恥知らずの王女と。 人魚ではない、人形だと。 「……」 口を閉じ、目を細めた。 ――……興醒めだ。 だが、その時だった。 『パンパン』と手を鳴らす音が聞こえたのは。 「ッ!?」 ルナはハッと我に返って、辺りを見回した。 人間に見つかったのか、と不安に思って。 だが、次に聞こえてきたのは能天気な声だった。 「こっちこっち! 上だよ! ほらほら!」 バッと顔を上げると、崖の上の野原で寝転がっている青年が居た。 ボサボサの黒髪で、小麦色の肌。 見たことがなくても、下半身を見ればわかる。 ケンタウロスだ。 青年はニッと笑っていた。 太陽のように眩しい笑みだった。 それは、笑えない人魚と脳天気なケンタウロス――二人の運命を変える出会いであった。  
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