病人と不良

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  僕の担任は若い男の人で、カッコいいというよりも綺麗で、男なんだか女なんだか判別の付け辛いくらいに中性的であり、どこか儚いとさえ思えるような印象を与えられてしまうような。そのくせ、なんだかちょっとぼーとした感じのゆるーい空気をまとっている僕の対極にいるような人だ。 その人いわく、僕は僕がそう思ってるならそうなんじゃないかと言う。 つまり、僕は『不良』であるらしい。 んん? 見事に話がループしてしまったようなので、とりあえず結論だけさっさつけていい加減にやり尽くして擦り切れ始めている自問自答を終わらせて、さっき出会った本物の『不良』という肩書きを全身で見せてくれた彼女を追いかけることにしよう。 なんてーか、お礼がしたいからってゆう建て前の下。ちょっとしたお願いをしに。 「よいさっ、と」 倒れていた体を起こし、地に足つけて立ち上がる。 彼女がどこに行ってしまったのか、考えながら上を見上げて自分が今さっき飛び降りた二階の窓から顔を覗かせてこっちを見ていた名前も知らない入院患者や看護士さんやらと視線を交差させてから、事の大きさなんかを今さら理解して、そこから逃げるように歩き出す。きっと逃げられるわけなんか、ないとしても。  
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