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気付けば、全員が沈黙していた。
ずっと喋っていたセバスチャンも口を閉じ、レイもまた、前を向いたまま黙々と歩いている。
先ほどから森のざわめきが聞こえなくなったのは、その静寂に満足してか――。
無論、そんな訳がない。
どうやらお出ましのようだ。
木々のざわめきの代わりに私の鋭敏な耳が捕らえたのは、空を裂く、あって無しが如き微かな音だ。
「…隠れてろっ」
私はセバスチャンの体を横手の林へと突き飛ばし、ランプに反射して煌めく無数の何かを、手刀で悉く打ち払う。
地面に突き刺さるそれは、湾曲した鋭い爪だ。
「多いな……」
「チッ! くそったれ!」
同じくそれを刀の鞘で打ち落としたレイは、舌打ちしつつ私を睨みつけた。
うむ、この男にはこの猟奇的殺人犯のような目つきがお似合いだ。
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