#0 暗黒の森に潜むは暗黒

13/21
前へ
/140ページ
次へ
 音さえ置き去りにする速度で放たれた光は、夜色と群青の二筋。  右手の一本は、刃は月の如き銀、幅広の刀身は夜の如き漆黒の直剣。名をノルン。  左手の剣は目も覚めるような青い刀身を持つ、緩くS字を描いた曲刀。名をセラフィム。  それらの閃光は、一番前にいたバンキートの半身を切り飛ばす。その血飛沫が地面で撥ねるより速く、私は一陣の風となって群がる悪魔の中に飛び込んだ。  見る間に首、あるいは胴を切断されたバンキート共は宙を舞い、断末魔の悲鳴が静寂の夜に死のコーラスを奏でていく。  なんだ。思ったよりも弱い。 「レイ、お前の出番は――」  ――と、私の言葉は途中で切れる。  私が踏みしめている地面に微かな殺気を感じ、咄嗟に飛び退いたからだ。 「くっ…! レイ、下だ!」 「あ? ――うおっ!」  レイが疑問符を浮かべた直後、私とレイの真下から土色の鋭利な爪が突き出してきた。 「チィッ!」 「多いな…」  私は気配を頼りに難なく避けたが、レイは反応が遅れ、当たりこそしなかったものの無様に尻餅を付いた。  まぁ、そこは大いなる慈悲をもって目を瞑っておくことにしよう。 「なんだよ!」 「ストラだ」  地面か勢いよく飛び出てきた異形を見やって、私は言った。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

149人が本棚に入れています
本棚に追加