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音さえ置き去りにする速度で放たれた光は、夜色と群青の二筋。
右手の一本は、刃は月の如き銀、幅広の刀身は夜の如き漆黒の直剣。名をノルン。
左手の剣は目も覚めるような青い刀身を持つ、緩くS字を描いた曲刀。名をセラフィム。
それらの閃光は、一番前にいたバンキートの半身を切り飛ばす。その血飛沫が地面で撥ねるより速く、私は一陣の風となって群がる悪魔の中に飛び込んだ。
見る間に首、あるいは胴を切断されたバンキート共は宙を舞い、断末魔の悲鳴が静寂の夜に死のコーラスを奏でていく。
なんだ。思ったよりも弱い。
「レイ、お前の出番は――」
――と、私の言葉は途中で切れる。
私が踏みしめている地面に微かな殺気を感じ、咄嗟に飛び退いたからだ。
「くっ…! レイ、下だ!」
「あ? ――うおっ!」
レイが疑問符を浮かべた直後、私とレイの真下から土色の鋭利な爪が突き出してきた。
「チィッ!」
「多いな…」
私は気配を頼りに難なく避けたが、レイは反応が遅れ、当たりこそしなかったものの無様に尻餅を付いた。
まぁ、そこは大いなる慈悲をもって目を瞑っておくことにしよう。
「なんだよ!」
「ストラだ」
地面か勢いよく飛び出てきた異形を見やって、私は言った。
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