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ストラ――それは、低級悪魔バンキートの亜種のような悪魔だ。
姿は、長く直線的な爪、焦げ茶色の鱗、体躯が一回り大きいのを除けば、バンキートとほとんど変わらない。
しかし、彼らは中級に属する強力な悪魔ということを忘れてはならない。
この通り地面に潜ることが可能で、穴を掘るのではなく土と同化し移動する。その移動速度はおよそ時速80キロ。
ある程度名の知れた強者ですら為す術なく殺されることもありうる厄介な相手だ。
だがいくら隠れて移動しようと私の感覚は誤魔化せない。
なぜなら私は元々、生まれつきの盲目だからだ。
今こそ見えるが、それも左目だけ。
長年の盲目生活から、視覚できなくとも、姿形、色や物体に宿る感情に至るまで脳内で再現することが可能だ。それは、未だに盲目だった頃と変わらない。だからこそ、ストラの接近に気づけたのだ。
ストラの数はおよそバンキートの半分程度――だが、まさか単体で動くはずのストラが群れを作って襲ってくるとは思わなかった。
ストラはバンキートなど足元にも及ばぬ強者だ。群れる必要などないはずなのだ。
「できれば俺が突く側に回りたいんだがな」
「減らず口を叩いている場合か。馬鹿者」
私はレイの隣に後退すると、この場面を乗り切る方法を考える。
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