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「あの『ブラッティ・グランス』が組んだっていう噂は本当だったのか! いや驚いた!」
ランプ以外の光のない夜の静寂を、セバスチャンの豪快な声が見事に粉砕する。
その声は思ったより森の奥で反響して響き、静寂を乱された木々が抗議するように葉を鳴らした。
「何か悪いかよ…」
森と一緒に顔を顰めて言ったのは、『ブラッティ・グランス』こと、レイだ。
旅の疲れも相まって、意外にも澄んだ声には、張りがない。
ここで勘違いしてほしくないのだが、レイは決してこのような冷めた性格をしていない。
「誰と組もうと俺の勝手だろ。おっさん」
「ふはははっ」
セバスチャンはレイの投げやりな応答を気にした様子もなく、子供のように無邪気に笑う。
「いや、噂だと思ってたからな。どっかで見たことある顔だと思ったら」
「なるほど。それで声を掛けたのか」
二人の後方、若干遠ざかった所から、少し低い、しかしよく通る声が二人の話しに割って入る。
ダークスーツを軽く崩したような服を纏った、気品の漂う容姿端麗の青年だ。
掻き上げた髪は黒とも言えない闇色で、瞳の色が左右で違う――左目は空よりも澄んだ群青、右目は影に解けるような漆黒だった。
背中には、双剣にしては大きすぎる二振りの剣が闇色の鞘の中に収められていた。
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