ぷろろーぐ

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 聖壌学院にある第3演習場で、魔法力測定試験が行われている。  主に容量・収束密度・構成精度・構成速度の4つについての検査だ。 「次、春日」 「はい」  呼ばれた春日春花は魔法科の教師たちの前に歩み出る。  この試験で用いる魔法は各人の自由で、基本的には何をしてもオッケー。 「ハルちゃん、頑張って!」  後ろから応援の声が聞こえて振り返ると、真ん丸とした目とツインテールの髪が印象的な友人-九条みゆが握りこぶしを作っている。  春花は小さく頷くと一度深呼吸をして、体を自然体にした。自然体は無駄な力が入らない最も魔法に適した姿勢だ。  魔法のイメージはバッチリ。予行練習も成功した。大丈夫。 「いきます」  組み上げた魔法を一気に解放する。  ふわっ  まるでそよぐような五つの帯状の風が、春花を中心として螺旋を描きながら広がっていく。  その風はこの場にいる誰しもを包み込み、 「あっ……」 「え?」  皆を困惑させた。  なぜなら風帯から音色が聞こえるからだ。  これが春花の魔法。その名も“カゼウタ(レプリカ)”。  でもなぜ(レプリカ)なのか。  この場においてただ一人、表情を変えない教師がいる。  教師といっても春花より一つ年上の高校二年生。なのに飛び抜けた才能で教師になった人物。  結城悠真。  春花と同じ“風”の属性を操り、日本で最高の魔法使いの称号-ウィザード-を持つ彼こそがこの“カゼウタ”のオリジナルを作った人物なのだ。
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