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廊下を小さな影が二つ進んでいる。
階段を上がり、突き当たりの部屋の前でストップ。
「エル。しー、だからね」
片方の影が小声で呼び掛けた。人差し指を口元で立てて、“静かに”の合図。
桃色の髪に幼さの多分に残る人形のように精巧な容姿を持つ女の子だ。
「お姉ちゃん?」
エルと呼ばれた少女は小首を傾げる。驚くことに二人とも瓜二つの容姿をしていた。
「いいから、しー」
「……しぃ」
姉-ルルに倣ってとりあえずエルも人差し指を口元に当てる。
可愛らしいやり取りだが、二人は人間ではない。
身長は15センチほど。背中から蝶に似た一対の光る羽を生やしている。
だが、身を包む水色のワンピースの布地を通り抜けるように生えていることから分かる通り、実体ではなく魔力で構成されたものだ。
彼女たちは妖精と呼ばれる存在だった。
ルルはドアの取っ手にぶら下がると、エルに手伝ってもらって上手に開ける。
部屋は全体的に明るい色で統一されていて、机に置かれた犬のぬいぐるみやクローゼット脇に備えてある鏡などからここが女の子の部屋であることがすぐにわかる。
「まだ寝てるね」
「にひひ」
部屋の主がまだ寝息を立てているのを確認すると、ルルがイタズラっぽい笑みを浮かべた。
ふよふよとベッドに近づく姉に何やら不穏な気配を感じるものの、見送るエル。
「ふっふっふ。時間通りに起きない悪い子にはお仕置きが必要だよね~」
深呼吸して気合いを充填。鳩尾にロックオン!
姉のしようとしていることに気づいた妹が制止しようとするがもう遅い。
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