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そこに役目を終えた妖精たちが戻ってきた。
「マスター、みゆさんを起こしてきました」
「きたよ~」
二人はテーブルに降り立つと、にぱっと笑顔で見上げてくる。
すぐにコーヒーに気づいたルルがムムム、と眉を寄せた。
「あ~、またマスターってば苦いの飲んでる」
「別にいいだろ。な、エル」
同意を求めてエルの頭を撫でてあげると、ほわ~んな笑顔で顔を紅くして気持ち良さそうだ。
「それはそうと二人とも、このままじゃ遅刻しそうだからバスで行くかも」
「「え?」」
ピキィ
瞬間、妖精たちが固まった。血の気が引き、顔が真っ青になる。
「やだ、ぜったいやだ!」
「ままままま、マスター、それは本当……なんですか?」
ぶるぶる震えながらの拒絶の意に市営バスにちょっと同情してしまうくらいだ。
でも遅刻するわけにはいかないので、妖精たちには折れてもらわないといけない。
「仕方ないだろ? 間に合わなくなるんだから。ちなみに嫌ならお留守番になるけど」
「う、うう~」
ルルはがくりとうなだれ、忙しなくバスとお留守番の選択肢に揺れる。
だが、ひらめくものがあったのかパッと顔を上げた。
「そうだ、みゆっちが早く来たらいいんだよ。そしたらバスに乗らなくていいんでしょ?」
「ああ、そうなるな。ところでエルはどうする? みゆが遅れたらバスに乗るか?」
尋ねてから気がついた。こういう時のエルの答えはいつも決まっている。
「私は大丈夫です。マスターと一緒に行きます」
「わかった。じゃあみゆを待とうか」
しばらくしてみゆの準備が終わったときには、徒歩のリミットは過ぎてしまっていた。
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