初恋

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  「ここで、本を読むんだ」  「はい?」 「…………」 「…………」   沈黙が滑り台内の空間を支配する。   怪しい……怪しすぎる。 本を読むためだなんて嘘に決まってる。傘を貸すためのキザな口実?でも、傘を貸すためだけに、ここまで強引なことをする人間がいる?   私はどうしたらいいのか戸惑っていた。   もしかして、危ない人だったりして――   滑り台内のクリーム色の壁に書かれた卑猥な落書きが、戸惑う私の不安を掻き立てる。   変なことされたらどうしよう……こんなことなら、さっさと傘を借りれば良かった。
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