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  「傘立て出しに行ったと思ったら、なかなか戻ってこないし……良い男でも歩いてた?」   そう言って由美さんは片眉をあげて笑うと、通りを見渡した。   「おおっ、あいあい傘!いちゃついてるね。傘で隠したつもりでも見えてますよ~」   由美さんの声は雨の音と、すぐそばにある大通りを走る車の音である程度は消されるとは言え、けっこう大きかった。   「由美さん、聞こえますって」   焦って止めると、グロスで艶めく唇をチュッと鳴らして店の中へ戻って行った。   ……由美さん、思いっきり彼氏の方がこっちを見てるんですけど。
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