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一進一退、春は足踏み 誰だろう・・・一雨ごとに  暖かくなる とか  言っていたのは 秋から冬は あまりに 早いのに 冬から 春は  足踏み するなって!!!  勇介はフロントグラスの曇りの溶け具合が遅いのだけで いらついてしまう。 夕べの医師同士の話し合いのあと看護師が次々と質問を投げかけて帰宅が遅れていた。  質問というより・・・雑談? に近い感じが残るのは偏見だ ろうか と3階の入院病棟へ 行くと即、濃い色の緑茶が置かれた。 「ありがとう」反射的に返答、ひとくちすすって んっ 「吉村さん、お茶は各自ってことになってるの、前にも言ったでしょ」 「そ・・・うでしたね」 看護助手の吉永茜は詫びたようなリアクションをみせて退散した後、看護師の高見沢 弥生は勇介を横目で見ると メガネをただすしぐさをした ので、勇介は多少慌てたが その緑茶が口にあったので飲 み干した。 昴劇団、監督、北島省吾を中 心とした7月公園「飛鳥の 尽」新人オーデションの審査 が始まっていた。 2次選考に残った20人に殺 陣を教えるスタッフ。 ギクシャクしながら鋼は時間 ぎりぎりまで小道具の剣を振 り回した。 10代の少女8人、20代の男5人10代の少年7人。 最後が鋼の演技、緊張もあっ てバランスが崩れ、鋼は一回 転のあと思いっきり転んだ、 完治していない右肩にずっしりと痛みが蘇る。 だがとっさに歪んだ表情のま ま立ち上がって殺陣をふって 止まり頭を下げていた。  急場を一瞬で防いだつもりもあったが舞台裏で肩を落とし、不合格だと自覚していた 「須藤君、すごいね、わざとでしょ!」 リハーサルのとき親しくなった同じ歳の松田可南子の反応に俯いていた鋼の脳に一条の光が走る。 そして、高揚する顔面にとま どいながらはにかんで可南子 のほうを見上げていた。
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