一頭との巡り会い

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その瞬間、観客や関係者は健次の行動に目を疑った。 健次は、バーニングハートの手綱をひと追いして、全力疾走するバーニングハートに更に拍車をかけたのだ。 健次の意志に呼応する様に更に勢い付き、後続を引き離すバーニングハート。 『賭けに出たか』 健次の騎乗を見て、笑みを浮かべる豊。 レースは完全に全力疾走するバーニングハートの独走劇で終盤ラスト600メートルのコーナーに差し掛かりバーニングハートの息が上がり始めたのを、健次は感じた。 勝負所でスタミナの切れかけるバーニングハート。 誰が見ても火を見るより明らかであった無謀な騎乗。 大きく引き離していた後続が一気にスパートをかけみるみる、バーニングハートとの差を縮めた。 ここに来て健次は更なる賭けに出た。 手綱を引いて息の上がりかけたバーニングハートを下げ、後続の馬群にバーニングハートを並ばせた。 観客、関係者誰もがバーニングハートは終わったと思った。
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