第一章「幼い記憶」

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「さてさて、私は夕飯の準備をしないと」 そろそろ父さんの帰って来る時間だ。 蝶華は夕飯の準備をするために立ち上がった。 「あ…そろそろ帰ります」 鳥香が慌てたように立ち上がる それに気付いた蝶華が微笑んだ。 「ゆっくりしてて大丈夫よ?なんなら夕飯食べてく?」 「大丈夫です…両親も心配するので」 「そう。ならまた遊びにきてね」 蝶華はお土産にとラッピングされたクッキーを鳥香に手渡した。 「せっかく紅羅が初めて連れて来た友達なんだし」 「は、はい…」 「紅羅、鳥香ちゃんを送ってあげるのよ?」 「わかってるよ。行こう?」 「う、うん…お邪魔しました」 「またね。鳥香ちゃん」 蝶華に見送られながら俺達は事務所の扉を開けた。 「ただいま…」 「あ、父さん」 同時に事務所に帰ってきた人物 それは俺の父親の月花 歌鏡だった。 「紅羅、友達を連れて来るなんて珍しい…」 鳥香の姿を見るなり、歌鏡の目が驚きで見開かれる。 心なしか鳥香の顔も青ざめている。
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