第一章「幼い記憶」

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「君は…」 「父さんっ!鳥香は…」 俺は歌鏡の言おうとしている事に気付き、慌てて間に入る 「歌鏡」 同時に事務所内に響いたのは蝶華の声 「彼女は敵じゃない。ましてや子供だ」 その言葉はいつもの蝶華らしくなかった。 「わかってるよ。蝶華」 しかし歌鏡は気にした様子もなく答える。 「怪我してるみたいだね。家まで歩ける?」 歌鏡が鳥香に優しく微笑みかける。 「はい…」 鳥香は歌鏡を警戒しているようにも見えた。 「心配しなくていい、君が人間に危害を加えない限りは何もしない」 歌鏡が鳥香の怪我に目を向け、眉をひそめる 「君は人間に危害を加えられたみたいだけど」 「…」 鳥香がうつむく 「紅羅」 「何?父さん」 「彼女は俺が送って行くよ」 「え?」 いきなりの言葉に俺は戸惑いを隠せないでいた。 「彼女、怪我して歩けないだろう?」 「そうだけど…」 「紅羅には後から話がある。だから待っててくれないか?」 「わかった…」 俺は渋々ながらも承諾した。 微笑んだ歌鏡が鳥香を背負って事務所を後にする
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