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私が家から出ると、晴野は思わず見とれてしまうような笑顔を浮かべ私を出迎えた。
「遅いぞ、紗良」
「ごめんね。行こ」
「おう」
学校が同じだから、一緒に登下校できるのは私の特権。
でも、いつか晴野に誰より大切な人ができたらその人に譲ってあげてもいい。
「いー天気だねっ」
私が上機嫌で話し掛けると、晴野も相好を崩した。
「ちょうど桜も満開じゃん。そういえば去年花見に連れてってもらったよな」
「晴野も一緒に行ったっけね。また行きたいなー。親に頼んでみよっと。晴野もまた一緒に行こうね」
「さんきゅ。お前さ、あれ作ってよ」
「なに??」
「なんだっけ、あれ…」
「ロールケーキ??」
「そうそう、それ」
笑い合う私たちと、頬を染めて晴野の笑顔をみる通りすがりの女性たち。
実は…晴野は今、天涯孤独の身の上だ。
一昨年事故で晴野の両親が亡くなってしまったのだ。
遠くの親戚の家に引き取られるという話もあったけれど、晴野の希望で一人私の隣の家に住み続けている。
うちの親がなにかと面倒をみるから、晴野はうちの家族行事にもしょっちゅう参加するようになった。
事故の前と後で晴野の性格が変わることはなかった。
彼は泣いて泣いて泣き明かして。
いつか自分も天国に行ったとき両親に恥ずかしくないように生きてやるって笑った。
すごく強くて真っ直ぐだと思う。
私は晴野のそんなところを尊敬している。
なんて考えてるうちに、私たちはいつの間にか校門をくぐっていた。
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