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青年と女のチップの差枚数はあっという間に縮まっていった
三十枚の大勝負に負けてから女のリズムは狂った
女はポーカーが弱いわけではない
現にこのゲームで勝ち越されたことは数回程度だった
趣味で割り切っているとしても負けるのはやはり嫌なものだった
「スリーカード…オレの勝ちだね」
青年は女からチップを取っていく
この勝負でついに青年側のチップは百枚を超えた
残すゲーム数は三ゲーム
青年が全て勝負を降りたとしても百枚を超えた枚数を維持出来る
事実上、これで勝ちが決まったようなものだった
「ねぇ、お姉さんもこのままじゃ面白くないでしょ?」
カードを配られた青年が問い掛けた
女は何も言わずにカードと睨み合いをしている
「もうさ、全額張ろうよ」
その場にいる誰もが耳を疑った
中でも男が一番驚いただろう
「勝つか負けるか、それが基本でしょ?三十枚と言わずにドーンとさ」
青年は手元にある百五枚のチップのうち、九十五枚を場に出した
「ほら、姉さんも全額張りなよ」
女は動かない
「たった十枚差でしょ?後三回もやれば逆転出来るわ。そんな馬鹿げた勝負、受けるわけないじゃない」
「全部降りてもいいんだよ?」
青年の脅しとも取れる言葉に女は悩む
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