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男は辺りを見渡す
頭の切れそうなスーツの男、柄の悪い若者、買い物帰りの主婦、自転車に乗っている女学生
どう見ても適格者などいない
そもそも見ただけで適格かどうか分からないことは男にも分かっていた
それでも時間ギリギリまでは粘るつもりだった
男は商店街にある時計を見る
「後…五分…」
男は泣きそうになっていた
いいトシをしていながら、人目を気にせず泣き叫びたかった
しかしそれは出来ない
こうしている間も監視はされている
きっとこの様子を見て嘲笑っているのだろうと男は思っていた
ならばせめて、あれは詭弁で無かったことだけでも見せ付けてやりたかったのだ
自分でもつまらない意地だと分かっていた
「お、ラッキー」
男は声のする方を振り返った
そこには自分の半分もいってないであろう青年がいた
自動販売機でジュースを買っている様子だった
男は青年に近づく
青年が自動販売機に小銭を入れ、ボタンを押す
するとルーレットのようなものが動きだした
青年も男もそれに見入った
「お~!また当たった。こりゃまさに…」
「奇跡だ…」
青年は後ろを振り返った
そこには見たことのないオジサンが立っていた
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