166人が本棚に入れています
本棚に追加
「…で、貴方が彼の代打ちなのね?」
女はまだ驚きを隠せないでいた
「待たせてしまってすいませんね。でもほら、ヒーローは遅れてやってくるのが定石ですから」
青年は一人で笑っていた
「本当にこの人に任せていいのかしら?」
「構いません」
男はハッキリと言った
女は知っていた
男が代打ちを用意していると言ったのが嘘だと言うことを
しかし、どんな人間を連れてくるのかが楽しみで、敢えて男を部屋から出した
そして連れてきたのがこの青年だった
「じゃあ再開しましょうか?…ルールの説明は?」
「大丈夫大丈夫。さっきオッサンに聞いたからさ」
青年は後ろにいる男を親指で指す
青年は雰囲気に潰されないように明るく振る舞う
ビルの一室にある部屋
真ん中には木のテーブルが一つと椅子が二つ
椅子には女と青年が座っている
青年の後ろには男が
女の後ろにはスーツ姿の男が二人立っている
「確認の意味で言いますが、そちらのチップは三十枚、こちらは百七十枚。残りのゲームは二十ゲーム。もしチップが無くなり破産した時は…」
「分かってるって。それにその先は代打ちのオレには関係ない話」
女は後ろのスーツの男の一人に目で合図する
スーツの男がトランプを取り出し、シャッフルを始める
「彼がディーラーを務めます。ご安心を。これはただのゲームですからイカサマなんかはしません」
青年が警戒しているのを察知した女がにこやかに笑う
最初のコメントを投稿しよう!