22人が本棚に入れています
本棚に追加
その日、小さき姫ミスカーシャ姫は、5歳の誕生日を迎えようとしていた。
ミスカーシャ姫の住む王国…《ナカミライ》は大陸の東方を治める統治国家で、城の北に位置する神聖なる湖は、王国に豊かな大地を与え、農耕や商業が発展した平和な国として近隣に知られていた。
ミスカーシャ姫の誕生祭が《ナカミライ》の王都で準備されている頃、小さき姫は一人の湖畔で野花を摘んでいた。
当然、従者達は血相を掻いてミスカーシャ姫を捜索していたが、そんな事はお構いなしに、いつものように城を抜け出して、この湖畔へと遊びに来ていた。
ミスカーシャ姫が、ここへ来るのには理由があった。
数週間前、従者を連れ湖畔へ訪れた時、ミスカーシャ姫は美しい野花に気を取られ、皆とはぐれてしまった。
生まれてから、この時まで乳母や近衛兵などが必ず誰か側に居たので、ミスカーシャ姫は寂しさのあまり一人で泣いていた。
そこへ、見たこともない長く美しい青い髪をした女性が現れて、ミスカーシャ姫を従者の元へと導いてくれた。
別れ際、ミスカーシャ姫は女性にお礼をしようと振り向いたが、もう、その姿はなく、水音がしたので湖の方へ目を走らせたら、キラキラ光る青鱗のドラゴンが霧の中に消えて行くのが見えた気がした。
それからというもの、ミスカーシャ姫は、4歳とは思えぬ行動力で、城を抜け出しては、この湖畔へと足を運んだ。 しかし、それ以降、女性もドラゴンも見つける事が出来ないでいた。
最初のコメントを投稿しよう!