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川西君と私は付き合っていた。 入社してほどなく付き合い始め、そろそろ結婚だなんて、同期のみんなから騒がれていた。 ―――半年前までは。 なのに………半年前、突然、別れを切り出された。 失恋の傷にカサブタも出来ないうちに、川西君はひとつ先輩の総務の人と婚約――― 先月、結婚した。 夏に子供が生まれるらしい。 同じ会社 同じフロア 同じ部署 別れてから、顔を見るのも辛かったのに。 声を聞くのも切なかったのに。 飲み会で会話してるなんて… 自分が信じられなかった。 まだ、カサブタの下の傷は少し痛むけれど…… 半年前の私なら、すぐに逃げ出していたはず。 二人きりにならなければ、きっと…大丈夫だよ…ね? 洗面台の鏡に映る自分に問い掛ける。 頬を両手で包み……一拍おいてから、強めに叩いた。 中途半端な音が鳴り、じんわりと痛みがした。 気合いを入れ、トイレの重い扉を開けて通路を少し進む。 すると、さっきまで私の斜め前に座っていた顔があった。 「…か、川西君、どうしたの?」 みんながいる個室部屋までに気持ちを整えようとしていた私は、動揺しながらもなんとか平静を装った。 大丈夫。 そう、自分に言い聞かせて。
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