#3

3/6
前へ
/69ページ
次へ
トイレの案内表示板の下で、こちらに背を向けている背の高い青シャツ男を見つける。 「……もう、大丈夫だから。気にしないでね。ほんとに。」 聞き慣れた声の主が青シャツの肩越しに見える。 「そうか…?でも、みのり…ずっと飲み会に来なかったしさ…。今日も会えるなんて思ってなかったから…実はスゲー嬉しい。」 嬉しい……だと!? この無神経ヤローめ!! 酔いと怒りが混ざり、考えるよりも体が動いていた。 「水嶋くん!?」 「水嶋!?」 二人ほぼ同時に声を上げるのが聞こえたが、お構いなしだ。 「みのり、行くぞ。」 二人の間に割って入り、高山の腕をつかむと部屋へと足早に戻……ろうとした所で、高山が立ち止まり、川西に叫んだ。 「もう大丈夫だから!私には……水嶋くんがいるから。美紀先輩とお幸せにね!」 くるっときびすを返すと、高山は俺の腕をつかんで歩き出した。 今度は俺が腕を引っ張られる番だった。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1437人が本棚に入れています
本棚に追加