隣まで後何メートルが良い?

3/4
前へ
/12ページ
次へ
何で下手に出る? 私をヒス持ちの女かなんかに勘違いしてるのか。 或いは、わざと携帯を置いて行ったのであれば、それ故の 「あんた、それ演技?」 「ち、違うって。…待受…見たよな? つか開いてるし」 「見られたら困るのを待受にしないでよ」「おっしゃる通りです。だってさ、嬉しかったんだもん」 掌に乗せる気が微塵も無いと気付いたらしく、力無くその手を下げた。 高野君は、困ったように頭を掻く。 「茹弟が、そんな顔してる写真って中々無いんだぜ?」 確かに。 見た事が無い。 実家にある写真でも、幼い時位の物しか無いだろう。 只、それは、写真を撮る習慣が無いだけで、 「ねぇ、高野君。私っていっつもこんな顔してるの?」 「へ、何?」 「私って、こんな顔してるの? 高野君と居ると」 写真を撮られていないだけで、こんな顔をしていたのかも知れない。 第三者に確認を取るのは仕方無い事だと思う。 だって、自分が知らないだけで、いつもこんな顔をしているのなら、恥ずかしいじゃない。 或いは、彼と居る時だけならば。 恥ずかしさは減少…いや、しない、うん。 「え、あ、まぁ、たまにだけど」 「ふぅん…」 「何で?」 「別に。て言うか、さっさと別の待受に変えてよ」 飽きたような声をわざと出した。 こんな写真に動揺する訳は無いと、思い込ませる為に。 「え、変えるだけで良いのか?」 一方、高野君は心の底から驚いているであろう声色。 「は?」 何を言い出すのか?と顔色を曇らせた私に対して、彼はニヤリと、あのいやらしい表情を浮かべた。 何、変な事言った? 「消さなくて良いの? その写真」 はっと気付く。 急いで消そうと、使い慣れる訳の無い携帯の、画像ホルダーを開こうとした。 馬鹿違う、メール画面じゃない! 「おっと、駄目だよ!」 今度こそ、力強く引ったくっていく高野君。 「そっかぁー消さないで良いのかー。まぁとっくに保護してんだけどな」 気持ち悪い。 「ふざけないでよ、消して!」 今更。 そんな空気が流れた。 「消さなくて良いんだろ? 格好悪いよー」 女に二言は無いんだろ? ぐっと、喉が詰まる。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加