隣まで後何メートルが良い?

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この間、私が高野君を言い負かした時に使った台詞を、わざとらしく使う。 「ま、諦めるしかないんじゃない?」 嬉しそうに笑い、私の肩を叩く。 「あんたが言うな! いい? 絶対二度と待受にしないでよ!」 「…ありゃ、随分簡単に、っ、いーや、何でも無い! うん! しないしない!」 簡単に折れたって言いたいんでしょ? 分かってるよ。 何の待受にしようかなと、どっからどう見たって、機嫌が良いって分かる足取りで、ほったらかしにしていた野菜をしまいに行く後ろ姿に小さく声を掛けた。 「…ねぇ、その…画像、私にも送れる?」 「ん? 何か、言った?」 「言ってない」 「画像送れるとか、言っただろ? この写真なら送れるよ。でも何で? 消したいんじゃないのか?」 聞こえてんじゃないの。 聞こえなかったなら、聞こえなかったで構わなかったのに。 私はそういうのに慣れてない。 言いたい事が伝わらなかったのか、眉を潜める顔。 余計恥ずかしい。 高野君と違って、随分と捻くれている私が、本気で言える言葉って言うのは少なくて。 本気で喋る時の恥ずかしさったら無い。 君の計算の無い言葉に憧れている。 恥ずかしくって、小声になる。 さっきの声が聞こえるなら、聞こえるでしょ。 これを言ってしまったら、どうなるかなんて分かってるんだけど。 「さっきは、咄嗟に消そうとしたけど…。高野君は、私が高野君と同じ事で喜ぶとは、思わないの?」 結婚しました、なんて、言葉に動揺して、だけど、君と居る時の私が、そんな笑顔を零すなら、それでも良いかと。 「私も高野君が好きなのよ」 君と一緒に居ても良いのかと。 目を閉じて、抱き着いてくるであろう衝撃に耐える準備をした。 <完>
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