わたしの憂鬱

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わたし、野田有紀 26才。 頭はいい。顔、スタイルそこそこ良し。 仕事、派遣社員。 「おーい、野田くん、お茶を頼む」 部屋全体に聞こえるくらい大声で言ったのは高岡部長、推定55才。 加齢臭漂うお年頃だ。 わたしは渋々熱いお茶を持っていく。 「ありがとう。野田くんの入れたお茶が一番美味しいんだ」 そういいながらわたしの手を必要以上に触る部長。 気持ち悪いがもう慣れた。 こんな事でセクハラだの何だのいってたらこの会社で働いていけない。 「センパイ、またされてましたね、セクハラ」 机に戻ると隣の席の下妻はづきが話しかけてきた。 はづきは3ヶ月前に入ってきたばかりの新人派遣社員だ。 背が小さくて目がクリクリしていて可愛い。年は22才だといっていた。 「あのくらい慣れればどうって事ないよ。はづきちゃんはあの男に何もされてない?」 「はい、今のところは。例の事件があったからですかね」 例の事件とは、はづきと一緒に入ってきた派遣社員の子が、 『部長にお尻を触られた』 と言って会社を飛び出していってしまった事件だ。 あの事件で部長も少しは反省したらしい。 わたしにたいしては反省の“は”の字もないらしいが…。 「でも気を付けてね。どこでされるかわからないから」 部長を見るとにやけた顔で書類を見ていた。 わたしは部長に気づかれないように一瞬にらむと何事もなかったように仕事に戻った。
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