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「おはよー」
いつもより早く会社に行くとはづきがみんなの机を掃除していた。
朝の掃除は新人の仕事なのだ。
「いつも早く来て大変だね。わたしみたいな年長者は早く来る気がしないよ」
「セ、センパイ…」
はづきが目配せした先にいたのはわたしと同期入社でひとつ年上の藤村茜だった。
茜はまだ始業前だというのにパソコンを夢中で叩いていた。
ほとんどスッピンに近い顔で髪はひとつにまとめただけの地味な格好。
どこか近寄りがたくて同期でもほとんどしゃべった事はない。
でも、仕事はしっかりやると評判だ。
わたしなんかより大切な仕事を任されているらしい。
「ねぇ、ねぇ。藤村さんっていつもこんな早く出勤してるの?」
小声で聞く。
「はい。わたしより早く来てることもありますよ。仕事熱心ですよね」
はづきも小声でいった。
2人で茜の方を見た。っとその時、茜がこっちを向いて目が合ってしまった。
「おはよー、藤村さんも来るの早いね」
「昨日の仕事が残ってたんで早く来たの」
パソコンから目を離すことなく茜はいった。相変わらず無愛想だ。
わたしがそれ以上話しかける事はなかった。
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