~第二十章~

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また俺は闇に堕ちていく……。 今度は目覚めるために――。 大切な人が待っているはずの世界に――。 こんな俺を受け入れてくれる人のいる世界に――……。 ……………………… ……………… ………… ……。 『――、――――』 『………―――……、――』 『―――、――ぅ』 あぁ、眩しい。 とても……眩しい。 でも……うれしい。 帰ってこれた。 大切な人がいる世界に帰ってこれた。 それに少しだけど、姉ちゃんの声が聞こえた。 良かった……生きてくれてた。 さて、と……俺もそろそろ重たい瞼を開けますか……。 優『…………………ン』 …………あれ? 思ったより体が動かせない、と言うか……かろうじて瞼を開けただけで指1本も動かない。 しかも、声が……出ない……。 一体俺の体に何が…… 優乃華『………優?』 優『……………ゥァ』 優乃華『優……おきてるの?』 俺は聞こえるのか定かではない声と、首に神経を集中させて動かし、本当に僅かだけど頭を上げた……つもり。 でも、姉ちゃんなら分かってくれるハズだ! 優乃華『……起きて……ない、みたいね』 優『……ッ…………ッ!!』 ちょっと待て! ちょっと待ってくれ! 明らかに不自然な息遣いをしてるじゃん……起きてるシグナルをビンビンに出してるよ!? 確かに体とか動かせないけど、そこはいつものブラコンパワーとかで感じ取ってよ! 優乃華『じゃあ……いつもの、眠り姫への……目覚めのキスを……ふふッ』 ちょっと待ってえぇぇぇ!? 今この女郎はなんて言いやがった? いつもの目覚めのキスを……だと? しかも俺は男だから姫じゃないよ!? 俺が寝ているからってこのお姉様は好き放題やってくれてるみたいじゃないか……。 俺がどのくらい寝ていたのか分からないから、どのくらいの頻度で目覚めのキスをしているのか皆目検討もつかないけどもっ!! そりゃ無いですぜ姉ちゃん…… 優乃華『優……早く、起きてよ……』 チュッ……。 ……クソ。 そんな寂しげな声で言ったら……怒るに怒れないじゃんかよ―― チュルッ、クチュッ…… でもさ、姉ちゃん……。 眠り姫への目覚めのキスと言うものは……舌は入れないんだよ。 分かっててやってるでしょ……姉ちゃん。
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