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私『声だけの、名無しの……言葉を……信じろと?』
『……確かに。でわ、外の者は眠りについた頃合いだろう。我の姿……見せるとしようか』
途端、目の前の空間に歪みが生まれた。
ちょうど大人の男の人ぐらいの大きさの歪みはどんどん大きくなって、だんだんと人の形になっていく。
『うむ、優の言いつけを少しばかり破ってしまうが、理由を述べれば許してくれよう。して……娘、初めまして……だ』
銀髪、そして地面に着きそうなほどの長髪……それが第1に入ってきたもの。
痩せこけた頬が印象的な顔に、服装は……まぁ普通で、長身だけど華奢な体つき。
だけど、それは些末なモノでしかなかった。
…………私は震えた。
名無しの彼に畏怖の情を抱いた。
この世の者では無い……感じがした。
華月『ようやく姿を現したか……サブワン』
サブワン『久しいな白鳥華月。シャーダから解放した時以来だ……と。今はそれどころでは無かった。娘……我の姿を見せた、さっさと始めるぞ』
私『ちょっと待―――!! ――!? ――――、―――……』
サブワン……と言われた銀髪が手を翳(カザ)したと思ったら、私の返事を言う前に透明な液体に包まれた。
息は……出来るみたい。どうやって液体の中で呼吸させているのか分からないけど、酸欠にはならない。
サブワン『暫し待て。優が回復し終わる時迄には終わろう』
彼の声が届くのに、私のは届かない。何か理不尽な気もする……。
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