~第二十章~

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……時折、傷の痛みで気が遠くなりそうになりながら、俺は一部始終を聞いた。 俺が倒れ、姉ちゃんが剱さん達を相手に戦って、剱さんを戦闘不能状態にして……と、衝撃的な内容がふんだんに盛り込まれた話に、違う意味で気が遠のく様な感覚に襲われた。 ???『……それが、あの時に起きた全てだ』 優『あぁ……ありがとう』 痛い。 とてつもなく痛い。 胸の傷が―――では無くて、心が……痛い。 コイツの話を聞けば、姉ちゃんは、“また……アレを使った”。 それでなければ……姉ちゃんが剱さんに勝つことは無い。 ……というか、無理だ。不可能だ。 確かに姉ちゃんは強い。 普段はあんなのだけど、その気になれば二つ名が付くぐらいの実力はあるってのは保証する。 だけど、剱さんには勝てない。……普通に戦えば――。 でも、情が移った相手同士で片方は情で本来の力を出しきれず、片方は情や感情の一切を捨てれて、なおかつその情すらも戦闘力に変えられるとしたら……? 弱者が強者に勝つこともある。 それが……今回の姉ちゃんと剱さんの戦い、だと思う。 黒紫の髪と瞳を宿す“神城家”の特殊な能力を……“アレ”を使えば姉ちゃんの戦闘能力は数十倍に跳ね上がって、剱さんを戦闘不能にだって簡単に出来る。 もちろん、代償はあるけれども……。 優『此処に来てから姉ちゃんに変わったことは……?』 ???『さぁな。まだ3日しか経っておらぬし、我は娘に警戒されておるからか……目立った行動はしておらぬ』 優『そう、か……』 良かった。 今回は“アレ”を使う時間が短かったらしい。 “反動”が小さかったみたいだ……。
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