風が、ない。

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控えめ、というよりは、興味がない。 最初に彼女を見た時、弘はそう思った。 全身で周りを排除しようとしているように見えて、弘は彼女にひどく欲情した。 彼女と目が合うとか、それ以上の幸運は望んでいない。 ただ彼女を見ていたい。 弘は表を雑に掃きおえると打ち水をした。 今時、柄杓ですくってかけるのだ。かけるはしから乾いていく。バケツに三杯ぶん水を打ったあたりで、学校のベルが鳴った。 弘は軒下のばんこに腰かけて煙草を吸った。
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