風が、ない。

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耳の痛みで目が覚めた。どうやら寝てしまったらしい。頭の重みを受けて耳がじんじんする。框にはヒロムの涎が小さなみずたまりを作っていた。指で拭うとまたデニムの腿に擦り付けた。 暑い。こんな暑いなかよく寝ていられるものだ。ヒロムは時計をみた。 四時少し前。四時間近くも寝ていたらしい。その間、客はひとりも来なかったようだ。 ヒロムは冷蔵庫を開けて乳酸菌飲料を取り出した。前歯で穴を空けて、ちゅうちゅう吸った。アルミを丁寧に剥がして水洗いし、流しに置いた。 小学生のとき、この容器を集めてロボットを作るのが夏休みの男子の定番だった。
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