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ひとまず箱を預かる事にした。
ノートに名前と連絡先を書いてもらおうとすると、頑なに拒まれた。
『そこの店にいつもおるけど、毎日様子みにくるけんいいやろ?うちの連中には秘密やもん。』
『どうなるか知りませんよ。一応店長に伝えます。』
『そうね。ありがと。』
老婆は顔を綻ばせて笑った。きれいでも何でもないただの老婆なのだが、花が咲くように見事に笑う。
ぼんやりみとれると、老婆はいぶかしげな顔をして、来たときと同じように下駄を鳴らして帰っていった。
預かった『りょうかん』を開けてみる。
小ぶりの掛け軸の様なものだったが、素人目にみても、状態が良いとは言えない。
元通りに戻して文机においた。
柱時計がなった。
ヒロムは慌てて外に出ると、外の掃除をはじめた。
もうすぐ、彼女がここを通るはずだ。
近くの専門学校生に、気になる子がいる。
その子は昼休みになるとたいてい近所のコンビニに食料をかいに友達と出てくる。
美容学校だからか皆派手だ。そんな中にいて、一番に目立っている。けして、服や髪やメイクが派手なわけではないのだ。
彼女がヒロムと目を合わせることもない。
彼女らにしてみれば、ヒロムは電柱と同じだ。
平気で昨夜のセックスの話をしたりしている。
その子はいつも相槌をうつばかりで、控え目なところもいい。
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