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長いー
長い長い廊下を歩く
コツコツ…
あたりに響くのはカイの靴の音だけ
ぼんやりとした間接光が影を薄く伸ばす
街も館も闇にのまれたこの時間
まず起きている者はいない
ー最近どうもおかしい
眠りの中で…誰かが自分を呼ぶ…
毎夜毎夜見る同じ夢…
スラリとした女…
妖しい微笑み…
[オ・イ・デ]と美しい唇が動く…
ーダレナンダ ダレナンダ ダレナンダ…
考えても考えてもわからないのにー
…気になって仕方ない…
まるで蜘蛛の糸にからまった羽虫のように
夢の中の女に囚われている自分がいる
眠ろうにも眠れなくて
…
ーもしかしたらこの屋敷にお前はいるのか…?
遂にはそんな考えまで浮かんでくる始末で…
こうして毎夜毎夜館を歩き回る羽目になってしまったのだ
「…たく…、お前は誰なんだ…」
ーボソリと呟いたその直後
『…』
ーえ?
確かに聞こえたー
夢の中のあの人の声…
「どこだ…?何故俺を呼ぶ…?」
『…』
ーなんだ…?今なんて…?
クソよく聞こえない…
目の前の扉から聞こえた気がして
勢いよく部屋に飛び込みー
カイは意識を失った。
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