―夏の夜の夢ー[回帰]S姫君VSベテランS執事

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ー起きなさいー 冷たく澄んだ美しい声が遠くから聞こえる… …う…ん… 意識がゆっくり戻ってくる …あ……つ!………?! 体を起こそうとしたカイは節々に走る体の痛みで一気に目が覚めた 「…おはよう…」 金色にも見える薄い茶の髪 深い…碧い瞳 形のよい唇… 美しい美しい女… 「ーおまえ…!」 目の前に立っていたのはまさしく夢の中のー グイッと顎を掴まれる 「『おまえ』ではない…カオと呼びなさい…」 「…なんだよ…これは…どういうことだ?!」 カイの体は細いロープで動きを封じられていた 「……カイ…あなたをずっとまっていた…」 「…え……」 カオの細く長い指がカイの顔を撫でるー ゆっくりと愛おしむように…… 妖しく艶めかしい動き… カオの形のよい唇がカイの唇にそっと近づき… ……重なる…… 深い官能的な口づけ… 「……んッ…」 思わず…声が漏れる 身の自由を奪われ 弄ばれているかのような一方的な愛撫なのに 体が熱くなる…… そんなカイに満足するようにカオは碧い瞳を細めた まるで猫みたいにー ー屈辱的だ 「…クソッ!…お前はだれなんだ?」 ーカオの瞳に傷ついたような色が一瞬浮かぶ 「…あなたは私を覚えていない…私はあなたを忘れたことは…1日としてないのに…!」 語気を荒げながらカイを睨む 長い爪が腕に食い込むー 「…つ…!」 痛みに眉をしかめる 「そんな顔して…切ない…愛しい顔… 痛い…?カイ…」 カオの微笑みは優しい 愛されているとつい錯覚してしまうような 妖しい微笑みー 痛みをつい忘れて吸い込まれそうになる… ーなんだか…… 夢を見ているように体が痺れてる このまま…いっそ身をゆだねてしまいたい… 深い甘美なカオの薫りが鼻孔をくすぐる…… …この薫り… 前にもどこかで…? 「…ア…ウ…!」 突然いくつもの風景が脳裏に押し寄せてくる 遠い…遠い日… …君… 猫が好きな…気位の高い…姫君…気高くて美しい人………愛し愛された…記憶…身分が違う…涙…引き裂かれた想い… 『また必ず巡りあいましょう』 「…アアアアアア‼‼」 ー痛い 割れるように頭が痛いー 「…カオ…あなたは…」 どこを探してもみつからなかったパズルのピースが… パチン… 音をたててはまったー
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