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教師の声が虚しく響き渡る教室。ごく一般的な光景であろう。窓から映える木々、居眠りをする生徒。どれもが普通。どれもが退屈な日常。
教室の一角で一人の男子生徒がため息をもらす。
彼の名前はエルディ=ガーネット。本来なら美しく輝いている碧眼だが、今はその輝きを失い、色褪せてしまっている。
彼はこの約束された、マンネリ化してしまった日常に、些か暇を持て余していた。
予想していたよりも遙かに辛いね。
誰に言うでもなく、自分自身に言葉を投げる。無論だが、言葉が返ってくる事はない。頭の中での、自分自身との会話。
そうだ。元はと言えば、あの校長が原因なんだ。アクセルさんが校長になんてなるから―――
ここでエルディは、その考えを消すかのように軽く頭を振る。人の所為にするのはよくない、と自分に言い聞かせる。
でも、これはあんまりだよ。友達は増えて楽しいけど……。
この授業何度目かの欠伸をかみ殺す。ちなみに今は一時限目。今日も長い長い一日が始まるのだ、と、うんざりしたその瞬間―――
突如、静寂を破り、教室の扉が開いた。エルディは、はっと頭を上げた。
忘れてはならない。往々にして、物語は突然動き出すことを。
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