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「確かにパパを殺ったのは俺だ。でもよーく考えてみろ? 誰の所為でパパが死んだ? え?」
男は嫌悪感を感じる程の卑しい笑みを顔に貼り付け、言った。
女は少年を抱え込み、男に向かって叫ぶ。
「何を言うの! 全部……全部あなたの仕業じゃない!!」
「はっ! 違うね。俺は止めを刺しただけだ。死ぬ原因を作ったのは……なぁ? てめぇだろ、ガキ……?」
男は一歩、また一歩と少年に向かって歩み寄る。
女に抱え込まれている少年。よく見ると彼の体が小さく痙攣している。
「お……俺が、父さん……を」
何かに取り付かれたかのように、頭を掻き毟る少年。既にして平常心を失っている。
幾度となく擦り合わされた頭から、毛髪が舞い落ちる。しかし彼はそれを気にする様子もない。
「俺が父さんを……殺した? 俺が――」
「違う! 違うのよ……あなたは何も悪くない! 悪いのは――」
「ちょっと黙れや……」
男は刀を引き抜き、女ではなく少年に突き付ける。
つまり、黙らなければ少年を……。
女は悔しそうに唇を噛み締めた。加減を忘れたソレは皮膚を傷付け、朱色の血が滲み出てくる。しかし、それさえも彼女は厭わない。
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