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―――ドタドタドタ
階下からこの部屋へ、荒々しく階段を上り、廊下を駆けてくる足音
部屋の主は、ベッドの中でシーツにくるまり、健やかな朝の妨害音にイライラを募らせていた
―――ガチャッ
「れぇぇぇぇい!!!!!」
―――ガバッ
声と足音の主は、ベッドでシーツにくるまる彼女に勢いよく抱き付いた
神聖なる健やかで安全な朝の眠りを妨げられた彼女は低血圧のためか、普通に怒りのためか、深い皺を眉間に寄せる
「何………
朝から人の眠りを妨げておいて………」
低い声色で返せば、相手は苦笑したような表情を見せて彼女、麗から離れた
「ごめんごめん
低血圧の麗を起こすのは抵抗が有ったんだけどね」
「抵抗したまま死ねば良かったのに」
「酷っ!!
叔父さん泣くよ??」
「勝手にしろ」
ツンッと冷たく鋭く言葉を言い放つ麗は、碧い眼を細めて相手の男を睨んだ
「んで何の用なんだよ??
壱夜叔父さん」
抱き付きにきた張本人、麗の叔父である壱夜に何の理由で安眠妨害をされたのか尋ねる
その壱夜の口から零れ落ちたのは、麗にとって驚愕で絶望的な一言
「麗、来週から学校に行って貰うから」
「はっ!!?」
あまりの唐突さに、情報が読み込めない麗は呆れ声しか出ない
数年前までイギリスで暮らしていたハーフの麗にとっても、日本の高校制度は自由性だと知っているのだ
しかも今の麗は年齢でいえば高校2年生と、中途半端な年だ
しかも世間の学校は夏休みが終わって、学校が始まってから既に一週間から二週間経っている
高校に入学させたかったのなら、去年の春に入学試験を受けさせれば良かっただけの話なのに、わざわざ今それをしなくても良いだろう
だというのに何故、今更壱夜の口からそのことが零れ落ちたのか、麗は理解が出来なかった
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