出会い

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何かのホラー映画で、精神病院が映し出された事があったが、実際の施設内は、テレビも観葉植物も無く、椅子やテーブル等の備品は備え付けだった。 つまり余程の怪力じゃない限り持ち上げることができなくなっているのが実状だ。 そったらもんで殴られたら、看護婦さんだってたまったもんじゃない❗ そんな光景を見つつ、私達を先導する看護婦さんは、さらに奥の薄暗い廊下を突き進む。病院の中は外から見るよりずっと広く感じた。暫く進むと、一枚のドアの前で看護婦さんが立ち止まり 「コチラです。」 と言ってポケットから鍵を出してドアに差し込み鍵を開けた。 ドアには窓が無かった。鉄製のスライド式のドアを重そうに開け「〇〇さんにご面会です。」と言って部屋の中へ通してくれた。 先頭は友人の両親、次に友人。私は一番最後に入室した。 部屋に入ってすぐ異様な光景にゾっとした。 部屋には布団が一組敷いてあるだけでベットもトイレも何にも無い。広さは充分あるのに布団以外何も置いていないのだ。 そして天井に近い場所に鉄格子のついた窓がひとつあるだけだった。その窓のすぐ下に、壁にもたれ掛かるように非常に割腹の良い看護婦さんが睨みを効かせて立っていた。 部屋に入るやいなや彼が私達に駆け寄ってきた。 ゾッとした。 前に会ったときには感じなかったガクガクが、体中に現れ、恐怖で体が動かない❗❗ 明らかに違う❗❗目を見開き、物凄い勢いで私達を部屋から排除しようとするのだ。 「僕の中には悪魔がいます❗危険ですから部屋から出てください❗」 その言葉に嘘はない❗明らかに違う❗あんなに頑なに話さなかった彼が、大きな声で叫ぶように何度も何度も「危険です。早く出てください❗」と私達を部屋から押し出そうとするのだ。 その間も瞬きひとつせず目を見開いたままだ❗ 友人とその両親は「私達の事わからないの⁉」と部屋に留まろうと彼の体を押し返す。 私には彼の形相が段々変わって行くのがわかった。彼が…彼の意識が違うものに占領されて行く…❗目の回りが黒く変色していく…❗眼球が徐々に金色に変色していく…❗口が段々に横に広がって行く…❗全身に悪寒が走る❗ 見えていない者にはわからないこの追い詰められるような恐怖感…❗❗❗ 彼の髪が逆立って行く❗私の恐怖がピークに達する❗❗何とかしなければやられる❗❗
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